2024年07月05日
こんな事を頻繁にしているので
こんな事を頻繁にしているので
「そんなに生き物がお好きならば、わざわざ蓮池などに行かずとも、鳥を飼うなり、前庭の池に鯉を泳がせるなりなされば良いのに」
と、三保野から毎度のように言われていた。
「そうではない。私は自然の中にいる生き物を見ているのが好きなのじゃ。
閉鎖的な場所にいる生き物と違ごうて、次なる動きが予測出来ぬ故、飽きずに見続けていられまする」
濃姫がこう意気揚々として言葉を返そうものなら
「一つの事に夢中になると、なかなかにそこから抜け出せぬご性分は、お幾つになられても変わりませぬなぁ…」
と三保野は呆れ顔で首を横に振るのである。https://paul.3rin.net/Entry/6/ https://johnn.animech.net/Entry/6/ https://johnn.anime-cosplay.com/Entry/6/
それでも、好きなものは好きなのだから仕様がない。
そう自分に言い聞かせ、濃姫はいつものようにこの場所に足を運んでいた訳だが
「──お方様!こちらにお出ででございましたか!」
侍女のお菜津が小走りにやって来た事で、この日の楽しみはたった数分で終(しま)いとなった。
「申し上げます。急ぎ御座所へお戻り下さいますようにとの、三保野様からのお言伝てにございます」
「何かあったのか?」
「美濃のご母堂様よりお文が届いておられる由」
「…母上から?」
濃姫は眉をひそめるや否や、お菜津ら侍女たちを引き連れて直ちに居室へと戻った。
時ならぬ文である。
親族に不幸でもあったのか、または村木砦の戦の折に書き送った書状のことで何か問題が起こったのか──
色々思い当たる節があり、後回しには出来まいと思った。
濃姫は、居間の下座で待ち構えていた三保野から手早く文を受け取ると、上座の茵に着き、すぐに中を検めた。
眉間に一本筋を寄せながら、小見の方の、美しいがやや癖のある文字の数々に黙って目を泳がせてゆく。
「美濃のお方様は何と? どのようなご要件にございますか?」
三保野も気になるのか、身体を前に突き出すような姿勢で伺うと
「大事ではあるが…、思っていた大事とは違うようじゃ」
濃姫は真剣な眼差しを文面に注ぎつつ、どこか無感動に呟いた。
「どうやら父上が、斎藤家のご家督を義龍の兄上へ譲るご決意を固められたらしい」
「ま、では殿様がとうとうご隠居の身に !?」
「ええ。──父上様におかれては、折を見て、正式に稲葉山城主の座を譲り渡す旨を、皆々にご公言あそばされる心積もりとの事」
「何とまぁ、おめでたき事でございますな」
三保野が頬を緩めて述べると
「そうよのう。めでたい事…なのであろうな」
濃姫はどこか悩まし気な表情で呟いた。
腹違いとは言え敬愛する兄の出世である、濃姫も喜ばしい事だとは思っていた。
道三と義龍の仲が芳(かんば)しくない為、よもやこのような日は来ないかも知れないと案じていただけに、安堵感もひとしおなのである。
ただ、気掛かりなのは“万一の事態”が起こりはせぬかという懸念であった。
織田家への輿入れ前にも、従兄の光秀から
《 義龍様におかれましては、父上・道三様に対し奉り御謀反(ごむほん)の意志ありとの噂が、城中にて真しやかに飛びかっているのです 》
《 (道三の)孫四郎様、喜平次様へのご偏愛甚だしく、いずれは義龍様を廃嫡して、弟君様を当主の座に据えるつもりではないかと── 》
という話を聞かされた事があった。
この話の裏には、そういった噂が流れているとあえて本人に伝える事で、義龍の動きを封じ
「そんなに生き物がお好きならば、わざわざ蓮池などに行かずとも、鳥を飼うなり、前庭の池に鯉を泳がせるなりなされば良いのに」
と、三保野から毎度のように言われていた。
「そうではない。私は自然の中にいる生き物を見ているのが好きなのじゃ。
閉鎖的な場所にいる生き物と違ごうて、次なる動きが予測出来ぬ故、飽きずに見続けていられまする」
濃姫がこう意気揚々として言葉を返そうものなら
「一つの事に夢中になると、なかなかにそこから抜け出せぬご性分は、お幾つになられても変わりませぬなぁ…」
と三保野は呆れ顔で首を横に振るのである。https://paul.3rin.net/Entry/6/ https://johnn.animech.net/Entry/6/ https://johnn.anime-cosplay.com/Entry/6/
それでも、好きなものは好きなのだから仕様がない。
そう自分に言い聞かせ、濃姫はいつものようにこの場所に足を運んでいた訳だが
「──お方様!こちらにお出ででございましたか!」
侍女のお菜津が小走りにやって来た事で、この日の楽しみはたった数分で終(しま)いとなった。
「申し上げます。急ぎ御座所へお戻り下さいますようにとの、三保野様からのお言伝てにございます」
「何かあったのか?」
「美濃のご母堂様よりお文が届いておられる由」
「…母上から?」
濃姫は眉をひそめるや否や、お菜津ら侍女たちを引き連れて直ちに居室へと戻った。
時ならぬ文である。
親族に不幸でもあったのか、または村木砦の戦の折に書き送った書状のことで何か問題が起こったのか──
色々思い当たる節があり、後回しには出来まいと思った。
濃姫は、居間の下座で待ち構えていた三保野から手早く文を受け取ると、上座の茵に着き、すぐに中を検めた。
眉間に一本筋を寄せながら、小見の方の、美しいがやや癖のある文字の数々に黙って目を泳がせてゆく。
「美濃のお方様は何と? どのようなご要件にございますか?」
三保野も気になるのか、身体を前に突き出すような姿勢で伺うと
「大事ではあるが…、思っていた大事とは違うようじゃ」
濃姫は真剣な眼差しを文面に注ぎつつ、どこか無感動に呟いた。
「どうやら父上が、斎藤家のご家督を義龍の兄上へ譲るご決意を固められたらしい」
「ま、では殿様がとうとうご隠居の身に !?」
「ええ。──父上様におかれては、折を見て、正式に稲葉山城主の座を譲り渡す旨を、皆々にご公言あそばされる心積もりとの事」
「何とまぁ、おめでたき事でございますな」
三保野が頬を緩めて述べると
「そうよのう。めでたい事…なのであろうな」
濃姫はどこか悩まし気な表情で呟いた。
腹違いとは言え敬愛する兄の出世である、濃姫も喜ばしい事だとは思っていた。
道三と義龍の仲が芳(かんば)しくない為、よもやこのような日は来ないかも知れないと案じていただけに、安堵感もひとしおなのである。
ただ、気掛かりなのは“万一の事態”が起こりはせぬかという懸念であった。
織田家への輿入れ前にも、従兄の光秀から
《 義龍様におかれましては、父上・道三様に対し奉り御謀反(ごむほん)の意志ありとの噂が、城中にて真しやかに飛びかっているのです 》
《 (道三の)孫四郎様、喜平次様へのご偏愛甚だしく、いずれは義龍様を廃嫡して、弟君様を当主の座に据えるつもりではないかと── 》
という話を聞かされた事があった。
この話の裏には、そういった噂が流れているとあえて本人に伝える事で、義龍の動きを封じ
Posted by energyelaine at 00:32│Comments(0)