2024年05月10日
三津に冷ややかな目で見られた桂はま
三津に冷ややかな目で見られた桂はまた泣きそうになった。
「すまない,もう寝ようか。また延々同じ事を話しそうだ。」
桂はぎこちない笑顔でおやすみと告げて目を閉じた。
『明日からは余計な事を言わんように口数減らすか……。
小太郎は松子が歩み寄ってると言ってくれたが,もう松子は小太郎に全てを任せてしまおう……。
きっとその方が上手くいく。』
追いかけても駄目,待っていても何も変わらない。ならば一度身を引いてしまった方がいいのかも知れない。
「明日も順調に歩けるといいですね。おやすみなさい。」
三津の声と共に頬に柔らかい感触があった。
『今私は頬に口付けされたのか?松子との距離を考えようと思っていた所で!?
目を開けたいっ!どう言うつもりか聞きたいっ!期待してしまうぞっ!!』
目を閉じたまま一人で悶々としていたが,待てよとすぐに冷静になった。
『今までこれで散々失敗してきた。ここで調子に乗ってはいかん。https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2782116.html http://carinacyrill.blogg.se/2024/may/entry.html https://carina.asukablog.net/Entry/6/
松子は気を遣ってしただけだ……。そうすれば私が立ち直ると思っただけで,小太郎に抱くような感情は私には一切ないんだ……。』
桂は自分で自分に言い聞かせ,今までの振る舞いを思い返した。
『また好きになってもらえるように努めるなど言ったが,好きな相手と引き裂いて勝手に婚姻を結ぶような男を好きになるなんて有り得んだろ……。
愛されたいだなんておこがましい……。
私の勝手で傷付けたんだ。この際,形だけの夫婦で充分過ぎるだろ……。』
桂は決めた。もう三津の心を取り戻そうとするのはやめる。
『こうやって触れ合うのも極力避けよう……。だから今だけ……。』
京に着くまでは長旅だ。その間に起こる事態には不可抗力も含まれる。それ以外は余計な動きも考えもしないと決めた。
あちらに着けば今まで以上に慌ただしい日々になると思う。その中でたまに顔を合わせるぐらいがちょうどいい。
『出逢った頃と同じ生活に戻るだけでいい。松子にとってあの距離が一番心地良かったはず。
前に言ってたもんな……。近くにいるより離れて互いを思い遣ってる方が上手くいくと……。』
今度こそ三津の幸せを考えるんだと心に誓った。
翌朝,朝餉を食べてまた歩き出した三人は静かな物だった。
「無駄な体力は使いたくない。口数も減らすが君達は気にせず後ろを付いてきてくれ。」
朝餉の後,桂がそう言った。二人は分かったと言うしかない。
三津は歩調に配慮しながらも黙々と歩く桂の背中を追いかけつつ,すっと入江の方へと近付いた。
「昨日何があったんです?」こそっと小声で話しかけた。
「んー。私が思っちょる事を正直に話しただけ。」
「うん,それは分かってる。その内容が問題。」
三津がそこを詳しく聞こうとした所で桂の足がぴたりと止まった。三津は慌てて入江を距離を取り,桂と入江の中間ぐらいの位置で止まった。
「すまん,用を足してくる。」
それだけ告げて雑木林に姿を消した。姿が見えなくなってから三津はまた入江の傍に寄った。
「で?話の内容とは?勝手に人の何を幸せと議論したの?」
「えー議論っていうか,ちょっとキツめに私の本心を伝えたそ。
それで分かりやすく落ち込んでしょぼしょぼの木戸さんを,松子が可愛いと思って仲睦まじく過ごせばいいかと思ったんやけど。
逆に二人は何があったそ?」
『明確な意図があって強めに言った訳ね……。』
確かに入江の思惑通り気落ちした桂は弱々しくて包んであげたくはなったが,向こうがそこまで素直に甘えて来なかった。
「何もなかったと言うか,同じ話を延々繰り返しそうやからってあっちがすぐ寝ました。で,起きたらあれです。」
「すまない,もう寝ようか。また延々同じ事を話しそうだ。」
桂はぎこちない笑顔でおやすみと告げて目を閉じた。
『明日からは余計な事を言わんように口数減らすか……。
小太郎は松子が歩み寄ってると言ってくれたが,もう松子は小太郎に全てを任せてしまおう……。
きっとその方が上手くいく。』
追いかけても駄目,待っていても何も変わらない。ならば一度身を引いてしまった方がいいのかも知れない。
「明日も順調に歩けるといいですね。おやすみなさい。」
三津の声と共に頬に柔らかい感触があった。
『今私は頬に口付けされたのか?松子との距離を考えようと思っていた所で!?
目を開けたいっ!どう言うつもりか聞きたいっ!期待してしまうぞっ!!』
目を閉じたまま一人で悶々としていたが,待てよとすぐに冷静になった。
『今までこれで散々失敗してきた。ここで調子に乗ってはいかん。https://carinacyril786.livedoor.blog/archives/2782116.html http://carinacyrill.blogg.se/2024/may/entry.html https://carina.asukablog.net/Entry/6/
松子は気を遣ってしただけだ……。そうすれば私が立ち直ると思っただけで,小太郎に抱くような感情は私には一切ないんだ……。』
桂は自分で自分に言い聞かせ,今までの振る舞いを思い返した。
『また好きになってもらえるように努めるなど言ったが,好きな相手と引き裂いて勝手に婚姻を結ぶような男を好きになるなんて有り得んだろ……。
愛されたいだなんておこがましい……。
私の勝手で傷付けたんだ。この際,形だけの夫婦で充分過ぎるだろ……。』
桂は決めた。もう三津の心を取り戻そうとするのはやめる。
『こうやって触れ合うのも極力避けよう……。だから今だけ……。』
京に着くまでは長旅だ。その間に起こる事態には不可抗力も含まれる。それ以外は余計な動きも考えもしないと決めた。
あちらに着けば今まで以上に慌ただしい日々になると思う。その中でたまに顔を合わせるぐらいがちょうどいい。
『出逢った頃と同じ生活に戻るだけでいい。松子にとってあの距離が一番心地良かったはず。
前に言ってたもんな……。近くにいるより離れて互いを思い遣ってる方が上手くいくと……。』
今度こそ三津の幸せを考えるんだと心に誓った。
翌朝,朝餉を食べてまた歩き出した三人は静かな物だった。
「無駄な体力は使いたくない。口数も減らすが君達は気にせず後ろを付いてきてくれ。」
朝餉の後,桂がそう言った。二人は分かったと言うしかない。
三津は歩調に配慮しながらも黙々と歩く桂の背中を追いかけつつ,すっと入江の方へと近付いた。
「昨日何があったんです?」こそっと小声で話しかけた。
「んー。私が思っちょる事を正直に話しただけ。」
「うん,それは分かってる。その内容が問題。」
三津がそこを詳しく聞こうとした所で桂の足がぴたりと止まった。三津は慌てて入江を距離を取り,桂と入江の中間ぐらいの位置で止まった。
「すまん,用を足してくる。」
それだけ告げて雑木林に姿を消した。姿が見えなくなってから三津はまた入江の傍に寄った。
「で?話の内容とは?勝手に人の何を幸せと議論したの?」
「えー議論っていうか,ちょっとキツめに私の本心を伝えたそ。
それで分かりやすく落ち込んでしょぼしょぼの木戸さんを,松子が可愛いと思って仲睦まじく過ごせばいいかと思ったんやけど。
逆に二人は何があったそ?」
『明確な意図があって強めに言った訳ね……。』
確かに入江の思惑通り気落ちした桂は弱々しくて包んであげたくはなったが,向こうがそこまで素直に甘えて来なかった。
「何もなかったと言うか,同じ話を延々繰り返しそうやからってあっちがすぐ寝ました。で,起きたらあれです。」
Posted by energyelaine at 03:11│Comments(0)