2024年01月30日
『桂さんいつの日か言ってたな…。
『桂さんいつの日か言ってたな…。巡りあってしまうって…。』
信じたくないが本当かもしれない。
吉田は強く唇を噛み締めた後,三津の手を掴んで無理矢理手のひらを上に向けた。
「御守だ肌身離さず持ってろ。何があっても守られる。いいか離さず持ってろ。」
吉田はその手をぐっと握らせると振り返ることなく立ち去った。
「え?何?」
呆気に取られつつ握りこんだ手をそっと開くと,そこには濃藍色の紐があった。https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/8a575b99ef6a9d2f4e30eb82880037ac https://www.bloglovin.com/@carinacyril/12384686 https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/132602986
「御守…。」
何の紐だろう?俯いてそれをじっと見つめながら鼻を啜った。
『吉田さんは桂さんが来られへんって伝えるのと,私がまた危ない目に遭わん様にこの御守渡す為に来てくれたんかな…。』
それなのに泣いてしまって悪い事をしたなと眉を垂れ下げた。
「どうして泣いてるんですか?もしかして迷子ですか?」
背後から声がしたと思ったら,振り返る間もなくふわりと優しく包み込まれた。
「え?」
「遅くなってすまない。随分と待たせてしまったね。」
甘い声に耳をくすぐられ,三津は慌てて身を捩り後ろを振り返った。
「桂さん…。」
すると桂はつんとそっぽを向いてしまった。
来ないと言われたのに現れた。それなのに呼びかけには無視されて,三津は何が何だか分からない。
「あの…遅れたのは私で,まず待ち合わせ場所にも行けなくて…。」
それでも桂は一言も言葉を発してくれなくて,こっちを見てもくれなくて,大混乱の三津の目からまたぼたぼたと涙が零れた。
「泣くのはずるい…。違うんだ,そろそろ名前で呼ぶの慣れてくれないか?」
桂はごめん大人げなかったと大粒の涙を親指の腹で優しく拭った。
「……はい。」
三津は耳まで赤くして目を伏せた。おまけに涙で白粉が落ちてしまってるかもと思うと恥ずかしくて向き合えない。
「今日はやたらと知り合いに会うんだ。」
「私もなんです!」
何があるんでしょうね?と目を丸くして小首を傾げた。
「では私より先に三津のこの姿を拝んだ奴らがいるんだね。羨ましいよ。
簪,やっぱり似合ってる。」
三津の顔を両手で包み込んで,愛おしそうに顔を寄せた。
額と鼻先がぶつかって自然と唇を重ねた。優しい口付けに身を委ねていると,口付けが次第に深くなりだした。
「んっ!んっ!」
流石に白昼の道端でこれはまずいと桂の胸を叩いた。
「誰かに見られたらどうするんですかっ!今日なんて!」
「そうだね,新選組の隊士が沢山いたね。」
「そうです…分かってるやないですか…。」
三津は顔を真っ赤にしてそんな人達に見られでもしたらと訴えるが,桂は至って冷静で顔色どころか表情一つ変えない。
「危ない目に遭って欲しくないんです…だから今日は…。」
「うん,お芝居はまた今度にして予定を変えよう。」
ここは素直に心配されておこう。でも帰ろうとは言わせない。
大丈夫だと宥めても三津は嬉しそうな顔をしないから,
「見つからなければいいんだ。手は打ってあるよ。」
桂は余裕の表情を浮かべてさぁ行こうと歩き出した。
「あ…待って。」
三津は桂の前に回り込むと手拭いを取り出した。それから少し背伸びをして桂の唇に当てた。
「紅が…。」
恥ずかしいやら申し訳ないやら。自分の紅で薄っすら色付いた桂の唇を優しく拭った。
「流石にこれでは歩けないね。」
桂はくすりと笑って少し腰を落とした。
「外では…その…少しは我慢して下さいね…小五郎さん…。」
名前で呼ぶのが照れくさくて視線を彷徨わせながらぼそりと呟いた。
「努力する。」
手拭いを持つ手を制止させて,柔らかな頬に唇を寄せた。
大きく見開いた目と目が合って,にっと笑ってみせた。
「もぉ!分かってない!!」
手拭いを持つ手にぐっと力を込めて抗議する三津を追い越して,桂はご機嫌で歩き出した。
『さぁて,大事なのはここからだ。』
「うーむ,まだ居るねぇ。」
脇道からそっと通りを覗く。まだ隊士がいるらしいが,三津は桂の背後に居て窺い知る事が出来ない。
「動かない方がいいですか?」
「いや,大丈夫。ちゃんと逃げ道は用意してるから。」
桂は周りを見渡してから口角を上げた。それから三津においでと手招きをした。
そして私の後ろに隠れておくようにと忠告した。
「おい!あれ桂じゃないか!」
と自分で声を上げた。
「え!?」
信じたくないが本当かもしれない。
吉田は強く唇を噛み締めた後,三津の手を掴んで無理矢理手のひらを上に向けた。
「御守だ肌身離さず持ってろ。何があっても守られる。いいか離さず持ってろ。」
吉田はその手をぐっと握らせると振り返ることなく立ち去った。
「え?何?」
呆気に取られつつ握りこんだ手をそっと開くと,そこには濃藍色の紐があった。https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/8a575b99ef6a9d2f4e30eb82880037ac https://www.bloglovin.com/@carinacyril/12384686 https://carinacyril786.pixnet.net/blog/post/132602986
「御守…。」
何の紐だろう?俯いてそれをじっと見つめながら鼻を啜った。
『吉田さんは桂さんが来られへんって伝えるのと,私がまた危ない目に遭わん様にこの御守渡す為に来てくれたんかな…。』
それなのに泣いてしまって悪い事をしたなと眉を垂れ下げた。
「どうして泣いてるんですか?もしかして迷子ですか?」
背後から声がしたと思ったら,振り返る間もなくふわりと優しく包み込まれた。
「え?」
「遅くなってすまない。随分と待たせてしまったね。」
甘い声に耳をくすぐられ,三津は慌てて身を捩り後ろを振り返った。
「桂さん…。」
すると桂はつんとそっぽを向いてしまった。
来ないと言われたのに現れた。それなのに呼びかけには無視されて,三津は何が何だか分からない。
「あの…遅れたのは私で,まず待ち合わせ場所にも行けなくて…。」
それでも桂は一言も言葉を発してくれなくて,こっちを見てもくれなくて,大混乱の三津の目からまたぼたぼたと涙が零れた。
「泣くのはずるい…。違うんだ,そろそろ名前で呼ぶの慣れてくれないか?」
桂はごめん大人げなかったと大粒の涙を親指の腹で優しく拭った。
「……はい。」
三津は耳まで赤くして目を伏せた。おまけに涙で白粉が落ちてしまってるかもと思うと恥ずかしくて向き合えない。
「今日はやたらと知り合いに会うんだ。」
「私もなんです!」
何があるんでしょうね?と目を丸くして小首を傾げた。
「では私より先に三津のこの姿を拝んだ奴らがいるんだね。羨ましいよ。
簪,やっぱり似合ってる。」
三津の顔を両手で包み込んで,愛おしそうに顔を寄せた。
額と鼻先がぶつかって自然と唇を重ねた。優しい口付けに身を委ねていると,口付けが次第に深くなりだした。
「んっ!んっ!」
流石に白昼の道端でこれはまずいと桂の胸を叩いた。
「誰かに見られたらどうするんですかっ!今日なんて!」
「そうだね,新選組の隊士が沢山いたね。」
「そうです…分かってるやないですか…。」
三津は顔を真っ赤にしてそんな人達に見られでもしたらと訴えるが,桂は至って冷静で顔色どころか表情一つ変えない。
「危ない目に遭って欲しくないんです…だから今日は…。」
「うん,お芝居はまた今度にして予定を変えよう。」
ここは素直に心配されておこう。でも帰ろうとは言わせない。
大丈夫だと宥めても三津は嬉しそうな顔をしないから,
「見つからなければいいんだ。手は打ってあるよ。」
桂は余裕の表情を浮かべてさぁ行こうと歩き出した。
「あ…待って。」
三津は桂の前に回り込むと手拭いを取り出した。それから少し背伸びをして桂の唇に当てた。
「紅が…。」
恥ずかしいやら申し訳ないやら。自分の紅で薄っすら色付いた桂の唇を優しく拭った。
「流石にこれでは歩けないね。」
桂はくすりと笑って少し腰を落とした。
「外では…その…少しは我慢して下さいね…小五郎さん…。」
名前で呼ぶのが照れくさくて視線を彷徨わせながらぼそりと呟いた。
「努力する。」
手拭いを持つ手を制止させて,柔らかな頬に唇を寄せた。
大きく見開いた目と目が合って,にっと笑ってみせた。
「もぉ!分かってない!!」
手拭いを持つ手にぐっと力を込めて抗議する三津を追い越して,桂はご機嫌で歩き出した。
『さぁて,大事なのはここからだ。』
「うーむ,まだ居るねぇ。」
脇道からそっと通りを覗く。まだ隊士がいるらしいが,三津は桂の背後に居て窺い知る事が出来ない。
「動かない方がいいですか?」
「いや,大丈夫。ちゃんと逃げ道は用意してるから。」
桂は周りを見渡してから口角を上げた。それから三津においでと手招きをした。
そして私の後ろに隠れておくようにと忠告した。
「おい!あれ桂じゃないか!」
と自分で声を上げた。
「え!?」
Posted by energyelaine at 19:53│Comments(0)