2023年12月10日

かのように普通に話すのだ

かのように普通に話すのだ。到底男女の情を通い合わせたとは思えぬ程である。


──あの総司のことだ、臆して何も言えなかったか?それとも、真面目な鈴木が女だとバラせずに終わったか。


 いずれにせよ、それを隊に持ち込まれるよりはずっとマシかと息を吐いた。


「本題だが…………。お前さんに新たな仕事を頼みたい」

「はい。何なりと……」


 桜司郎はその先を促すように、真剣な表情を浮かべる。https://www.tumblr.com/johnsmith786/736120998114492416/%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86?source=share http://johnsmith78.zohosites.com/ https://ameblo.jp/johnsmith78/entry-12831629812.html その心には、隊務に穴を開けた分の仕事をしたいという気持ちと、沖田の分まで働かなければならないという責任感があった。


 だが、土方は何処か渋い表情である。少しの間の後に漸く口を開いた。



「──御陵衛士と秘密裏に連絡を取る役を任ずる」


 その言葉に、桜司郎は目を丸くする。一番組の組長代理になるにあたり、御陵衛士との交流は禁止なのだと伝えられた記憶が新しい。


「……どうして、それが私なのですか」

「どういう訳か……、あっちがお前さんを指名して来たんだ」


 伊東を初めとして、あの斎藤すらも桜司郎を指定してきたのだ。伊東のみの望みならば聞き入れるつもりは毛頭も無かったが、斎藤が絡んでいるとなると考慮しない訳にはいかない。

 いずれ斎藤をこちらへ戻すことになったとしても、一番組を束ねる者と交流を持っておくことに越したことは無いと判断したのだ。


「俺としても、お前さんなら裏切らねえと思っている。よろしく頼んだ。必要な時に声を掛けるから、それまでは元の隊務に励め」


 下がっていい、と土方は桜司郎へ背を向け、貯まりに貯まった書類が山積みになっている文机の前へ座る。 生き生きとした新緑が目立ち、外に居続けると汗ばむようになってきた頃。

 桜司郎は沖田の部屋で布団一式を新しいものへ交換していた。天気の良い日には空気を入れ替え、布団を干し、陽光に当たれるようにする。天気が悪い日には摘みたての花を一輪生け、目で楽しめるようにした。

 このように毎日この療養部屋へ通い、なるべく清潔な環境で過ごせるようにと、世話するのが日課となっている。その甲斐甲斐しさに、まるで通い妻のようだと噂をする者もいた。


「桜司郎さん……。毎日貴女の顔を見られて嬉しいですが、疲れやしませんか」

「何を言います。八木家で使用人をやっていた頃は、もっと大変でしたよ。この上にやんちゃな子らのお守りまであったのですから」


 皺ひとつない綺麗な敷布を見て満足気に笑みを浮かべる桜司郎を、沖田は切なげに見やる。


「そう言えばそうでしたね……。コホッ、でもね、私は貴女にこれがるのではないかと心配なのです……」

「またそんなことを言う。私が好きでやっているのですから、心配しないで下さい」


 桜司郎は沖田の前へ座った。そして照れたような表情を浮かべ、

「…………沖田先生に会えない方が気鬱になります」

 と漏らした。

 それを聞くなり沖田は目を丸くすると、愛しげに目を細める。


「……それなら、止めようが無いですね」


 そのように穏やかな会話をしていると、廊下の板が踏み抜かれ、ギシギシと音を立てた。近付いてくる気配を感じ、廊下へと続く襖を見やる。


「沖田先生、山野です。今良いですか?」


 突然の山野の来訪に、沖田は桜司郎と顔を見合わせた。そして頷くのを見ると入るように促す。


「失礼しま──って、何だ。桜司郎も居たのか」



Posted by energyelaine at 16:56│Comments(0)
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