2023年12月10日
沖田は桜司郎の姿を見やると
沖田は桜司郎の姿を見やると、たちまち顔を真っ赤にする。なんたって、肩に襦袢を引っ掛けただけの一糸纏わぬ姿なのだ。
──困ったな。これはまずい。
口元に手を当て、顔を背ける。コホンと咳払いをした。
「……桜花さん、そ、袖を通して下さい。……いくら労咳とて、私だって健全な男ですよ。好いた女子のそのような姿を見れば……妙な気持ちにだってなります」
指摘を受け、桜司郎は下を見やる。
「~~~ッ!」
声にならぬ声を上げ、慌てて袷を引っ張って身体を隠した。https://ameblo.jp/carinadarling786/entry-12831630293.html https://carinadarling.dreamwidth.org/451.html https://www.dailystrength.org/group/carina-blogs/discussion/jin-teng-hauuntonian-ru 言い知れぬ羞恥の情が湧き、全身が朱に染まる。
「み、見ました……!?」
「…………ええ、まあ……その、」
その歯切れの悪さから、見られたことを察した。もはや脇腹の痛みなど気にもならず、身体を横へ向けて袖を通す。帯を手に取り、袷を整えながら巻いた。
「…………もうお嫁にいけない……」
蚊の鳴くような声で呟かれたそれはしっかりと沖田の耳に入る。む、と眉を寄せると悪戯っ子のように口角を上げた。
「……誰の嫁に行くのです?」
桜司郎の身体の横──敷布の上へ手をついて耳元で囁く。耳が弱点であることはとうに知っていた。
案の定びくりと肩が跳ねる。それへ顎を乗せ、背後から抱き締めた。自分でも驚くくらいに大胆な行動をしている自覚はある。だが、ずっと前からこうしたいと思っていたのだ。
いつの日だったか、原田の新居へ遊びに行った時に、彼は新妻をこのように慈しんでいた。情欲ではなく、愛情表現なのだと。いつ死んでもおかしくない身であるからこそ、共に居られる時間を余すことなく使うべきだと言っていた。
──あの時は分からなかったが、今なら分かるな。
鎖骨をなぞり、熱と焦りでしっとりとした柔らかな素肌に指を這わせる。経験が無いためか、情けないことに手が震えた。桜司郎は顔を真っ赤にしながら、潤んだ瞳で沖田を見る。
「お、お、おき、沖田……せんせ……ッ」
その時、ガタガタと玄関の戸が開けられる音がした。
「「!!」」
南部が帰ってきたのだと察した二人は弾かれるように身を放す。
桜司郎は光の速さで布団を被っては寝たフリをして、沖田は立ち上がってうろうろとした。
少しの時を経て、障子が開いて南部が部屋に入ってくる。
「鈴木さん、具合はどうだ?……って、熱上がってるな。沖田さんも顔真っ赤でねぇが。おめも熱がありそうだ。風邪……うづったが?」
「私は大丈夫です……自分が悪いので……。それより桜司郎さんを宜しくお願いします」
沖田はそう言うと、屯所へ先に帰っていく。皆が起き出す前に戻らねばならなかった。 沖田と桜司郎が心を通い合わせてから、たった数日後のことだった。沖田は再度喀血をし、いよいよ一線から退くことになる。
部屋も療養部屋へと移り、一番組の指揮は桜司郎が行うことになった。あくまでも代理ではあるが、事実上の昇格だった。
脇腹の傷がある程度癒えるなり、桜司郎は土方から呼び出される。
座れと促されるままに正座をし、眉間に皺を寄せる土方と向かい合った。
「先日は私の不注意で隊務に穴を開けてしまい、申し訳ございませんでした」
開口一番に深々と頭を下げる。不注意に至った理由は誰にも言うつもりは無いが、その間の隊務が他の隊士へ分散されたのだ。謝らない選択はない。
「今更なことだ。此度は不問とするが、次は無いと思え。体調管理も隊務の一環として心得ろ」
「はい」
「…………これでも俺ァ、お前さんのことを買っているんだ。失望させてくれるなよ」
「はい……!」
土方は硬い表情を和らげた桜司郎をチラリと見やる。あの後、沖田とどうなったのか気にならない訳では無い。しかし、それを聞くのはどうも憚られた。隊で顔を合わせても、二人はまるで
──困ったな。これはまずい。
口元に手を当て、顔を背ける。コホンと咳払いをした。
「……桜花さん、そ、袖を通して下さい。……いくら労咳とて、私だって健全な男ですよ。好いた女子のそのような姿を見れば……妙な気持ちにだってなります」
指摘を受け、桜司郎は下を見やる。
「~~~ッ!」
声にならぬ声を上げ、慌てて袷を引っ張って身体を隠した。https://ameblo.jp/carinadarling786/entry-12831630293.html https://carinadarling.dreamwidth.org/451.html https://www.dailystrength.org/group/carina-blogs/discussion/jin-teng-hauuntonian-ru 言い知れぬ羞恥の情が湧き、全身が朱に染まる。
「み、見ました……!?」
「…………ええ、まあ……その、」
その歯切れの悪さから、見られたことを察した。もはや脇腹の痛みなど気にもならず、身体を横へ向けて袖を通す。帯を手に取り、袷を整えながら巻いた。
「…………もうお嫁にいけない……」
蚊の鳴くような声で呟かれたそれはしっかりと沖田の耳に入る。む、と眉を寄せると悪戯っ子のように口角を上げた。
「……誰の嫁に行くのです?」
桜司郎の身体の横──敷布の上へ手をついて耳元で囁く。耳が弱点であることはとうに知っていた。
案の定びくりと肩が跳ねる。それへ顎を乗せ、背後から抱き締めた。自分でも驚くくらいに大胆な行動をしている自覚はある。だが、ずっと前からこうしたいと思っていたのだ。
いつの日だったか、原田の新居へ遊びに行った時に、彼は新妻をこのように慈しんでいた。情欲ではなく、愛情表現なのだと。いつ死んでもおかしくない身であるからこそ、共に居られる時間を余すことなく使うべきだと言っていた。
──あの時は分からなかったが、今なら分かるな。
鎖骨をなぞり、熱と焦りでしっとりとした柔らかな素肌に指を這わせる。経験が無いためか、情けないことに手が震えた。桜司郎は顔を真っ赤にしながら、潤んだ瞳で沖田を見る。
「お、お、おき、沖田……せんせ……ッ」
その時、ガタガタと玄関の戸が開けられる音がした。
「「!!」」
南部が帰ってきたのだと察した二人は弾かれるように身を放す。
桜司郎は光の速さで布団を被っては寝たフリをして、沖田は立ち上がってうろうろとした。
少しの時を経て、障子が開いて南部が部屋に入ってくる。
「鈴木さん、具合はどうだ?……って、熱上がってるな。沖田さんも顔真っ赤でねぇが。おめも熱がありそうだ。風邪……うづったが?」
「私は大丈夫です……自分が悪いので……。それより桜司郎さんを宜しくお願いします」
沖田はそう言うと、屯所へ先に帰っていく。皆が起き出す前に戻らねばならなかった。 沖田と桜司郎が心を通い合わせてから、たった数日後のことだった。沖田は再度喀血をし、いよいよ一線から退くことになる。
部屋も療養部屋へと移り、一番組の指揮は桜司郎が行うことになった。あくまでも代理ではあるが、事実上の昇格だった。
脇腹の傷がある程度癒えるなり、桜司郎は土方から呼び出される。
座れと促されるままに正座をし、眉間に皺を寄せる土方と向かい合った。
「先日は私の不注意で隊務に穴を開けてしまい、申し訳ございませんでした」
開口一番に深々と頭を下げる。不注意に至った理由は誰にも言うつもりは無いが、その間の隊務が他の隊士へ分散されたのだ。謝らない選択はない。
「今更なことだ。此度は不問とするが、次は無いと思え。体調管理も隊務の一環として心得ろ」
「はい」
「…………これでも俺ァ、お前さんのことを買っているんだ。失望させてくれるなよ」
「はい……!」
土方は硬い表情を和らげた桜司郎をチラリと見やる。あの後、沖田とどうなったのか気にならない訳では無い。しかし、それを聞くのはどうも憚られた。隊で顔を合わせても、二人はまるで
Posted by energyelaine at 16:54│Comments(0)