2023年12月01日
そこには周斎の遣いへ出た筈
そこには周斎の遣いへ出た筈の藤堂の姿がある。思わぬ人物の登場に桜司郎の心臓はバクバクと忙しなく音を立てていた。
へへ、と笑いその横に座る。そして藤堂は大きく背伸びをした。
久々の藤堂は髪が少し伸び、可愛らしい顔には似つかわしい無精髭が生えている。
「と、藤堂先生。どうしてここへ……」
「んー。早く土方さんと話しがしたかったから、かなぁ?」
その言葉に桜司郎の眉間に僅かに皺が寄った。
藤堂によると、こうである。周斎の遣いに出ていたが、https://www.evernote.com/shard/s330/sh/7e1777f1-b65e-3fdd-3aff-a60d002879bc/w3RjvxByCCEYJrC3gv_C3wopvxkGAoCGqr4VgRgF_4t0j1SEQGmxRBMheg https://blog.udn.com/79ce0388/180108732 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202311280002/ 思ったより早く帰ることが出来たと。試衛館へ帰ると、すれ違いで土方らが石田村へ旅立った後だった。
それを聞いた藤堂は、後を追ってきたのだという。
「そう、ですか……」
日野宿本陣の中庭に咲いた桜の木を藤堂は眩しそうに見詰めた。はらはらと花びらが藤堂の膝元に舞い落ちて来たため、それにそっと手を伸ばすが、指の間をすり抜ける。
「……鈴木からの文の後にね、山南さんから文が来たんだ」
山南、という名前に桜司郎はハッとして藤堂の横顔を見た。藤堂は視線に気付いたが、返すことなくそのまま言葉を続ける。の言葉が書いてあったよ。"私は私の信念を持って隊に殉じます。今まで有難う"って……。山南さん、死んじゃったんだね」
横顔は泣きそうに歪んだ。だが、声の調子はいつもの藤堂のままである。江戸という遠く離れた土地で、一人で山南の死を偲んで来たのだろうか。そう思うと、桜司郎は居た堪れない気持ちになった。
通夜や葬儀へ出て、別れをしっかり出来た桜司郎達と違い、藤堂はその文一つで死を受け止めなければならなかったのである。
「山南さんの事だから、必ずその行動に意味があったのだと思うよ。でも……、でもね。俺は、土方さんの口から真相が聞きたいんだ」
だから来ちゃった、と藤堂は俯いた。
京へ駆け付けたいのを我慢して、新撰組幹部として隊務を必死にこなしてきた。それも全て今日の日の為だったと藤堂は拳を握る。
「おれ……さ、家族が居ないんだよね。伊勢津藩のごなんて言われるんだけど。……両親も顔すら分からないし。強くなって、武士として名を上げれば、何時かは迎えに来てくれるかなァ……なーんて思っていた頃もあった訳」
そんな事は有り得ないけどね、と笑みを浮かべた。それが酷く寂しそうに見えて、桜司郎は何も言えなくなる。
「山南さんは俺にとって本当の兄上のような存在だったよ。剣の腕も、知識も全部凄くてサ。……家族を知らない俺だけど、家族を失うような辛さは今回分かったよ」
だからこそ、藤堂は死の真相を知りたがっていた。仕方が無かったんだと自分に言い聞かせる為にも、大好きな近藤や土方は悪くないと思い込む為にも、それが必要だった。
「……ごめんね。こんなこと一方的に聞かせちゃって。おれ……誰かに聞いて欲しかったんだと思う」
藤堂はそう言うと、立ち上がる。その顔には笑みが戻っていた。
確信は無いが、藤堂平助という人間は笑うことで感情を抑制しているのだろう。それが家族から捨てられた男の処世術なのだ。
そう思うと、笑みが悲しいものに見える。
「早く土方さん達戻って来ないかなァ……」
両腕を頭の後ろで組み、藤堂は空を見上げた。
へへ、と笑いその横に座る。そして藤堂は大きく背伸びをした。
久々の藤堂は髪が少し伸び、可愛らしい顔には似つかわしい無精髭が生えている。
「と、藤堂先生。どうしてここへ……」
「んー。早く土方さんと話しがしたかったから、かなぁ?」
その言葉に桜司郎の眉間に僅かに皺が寄った。
藤堂によると、こうである。周斎の遣いに出ていたが、https://www.evernote.com/shard/s330/sh/7e1777f1-b65e-3fdd-3aff-a60d002879bc/w3RjvxByCCEYJrC3gv_C3wopvxkGAoCGqr4VgRgF_4t0j1SEQGmxRBMheg https://blog.udn.com/79ce0388/180108732 https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202311280002/ 思ったより早く帰ることが出来たと。試衛館へ帰ると、すれ違いで土方らが石田村へ旅立った後だった。
それを聞いた藤堂は、後を追ってきたのだという。
「そう、ですか……」
日野宿本陣の中庭に咲いた桜の木を藤堂は眩しそうに見詰めた。はらはらと花びらが藤堂の膝元に舞い落ちて来たため、それにそっと手を伸ばすが、指の間をすり抜ける。
「……鈴木からの文の後にね、山南さんから文が来たんだ」
山南、という名前に桜司郎はハッとして藤堂の横顔を見た。藤堂は視線に気付いたが、返すことなくそのまま言葉を続ける。の言葉が書いてあったよ。"私は私の信念を持って隊に殉じます。今まで有難う"って……。山南さん、死んじゃったんだね」
横顔は泣きそうに歪んだ。だが、声の調子はいつもの藤堂のままである。江戸という遠く離れた土地で、一人で山南の死を偲んで来たのだろうか。そう思うと、桜司郎は居た堪れない気持ちになった。
通夜や葬儀へ出て、別れをしっかり出来た桜司郎達と違い、藤堂はその文一つで死を受け止めなければならなかったのである。
「山南さんの事だから、必ずその行動に意味があったのだと思うよ。でも……、でもね。俺は、土方さんの口から真相が聞きたいんだ」
だから来ちゃった、と藤堂は俯いた。
京へ駆け付けたいのを我慢して、新撰組幹部として隊務を必死にこなしてきた。それも全て今日の日の為だったと藤堂は拳を握る。
「おれ……さ、家族が居ないんだよね。伊勢津藩のごなんて言われるんだけど。……両親も顔すら分からないし。強くなって、武士として名を上げれば、何時かは迎えに来てくれるかなァ……なーんて思っていた頃もあった訳」
そんな事は有り得ないけどね、と笑みを浮かべた。それが酷く寂しそうに見えて、桜司郎は何も言えなくなる。
「山南さんは俺にとって本当の兄上のような存在だったよ。剣の腕も、知識も全部凄くてサ。……家族を知らない俺だけど、家族を失うような辛さは今回分かったよ」
だからこそ、藤堂は死の真相を知りたがっていた。仕方が無かったんだと自分に言い聞かせる為にも、大好きな近藤や土方は悪くないと思い込む為にも、それが必要だった。
「……ごめんね。こんなこと一方的に聞かせちゃって。おれ……誰かに聞いて欲しかったんだと思う」
藤堂はそう言うと、立ち上がる。その顔には笑みが戻っていた。
確信は無いが、藤堂平助という人間は笑うことで感情を抑制しているのだろう。それが家族から捨てられた男の処世術なのだ。
そう思うと、笑みが悲しいものに見える。
「早く土方さん達戻って来ないかなァ……」
両腕を頭の後ろで組み、藤堂は空を見上げた。
Posted by energyelaine at 16:58│Comments(0)