Energy Elaine

　　──廊下は閑散としていた。普段から人通りの少ない階ではあるが、歩いていて誰とも出会わないことなど滅多にない。しかし、今はその『滅多にない』ときであるらしく、誰も歩いていないのだ。ときであ　それだけではない。騒がしいわけではないが、普段は階下から常に何か話し声が聞こえてくるのだが、今日は静まり返っている。原因はあの襲撃であろうか。　重たい身体をどうにか動かし、長い廊下の角を曲がったサキカは、目に飛び込んできた光景に唖然とした。　崩れ落ちた廊下。吹き抜ける涼しい風。……外の風景が何の障害物もなく見えてしまっている。「……誰ですか、廊下を外と繋げたのは」　思わずつぶやいて、ため息を吐き出しそうになった。この修理は大変であろう。五階の廊下であるこの場所から外を見下ろせは、真昼の街を行きかう人々の様子が見えた。　戦争前であるためか、その足取りには穏やかな様子が見られない。皆せかせかと何かに追われるように、先を急いていた。　視線を自分が進むべき方向へと向けなおすと、ドアが完全に外れてしまったマスター室が目に入ってきた。さすがにマスター室であるためか衝立のようなものが部屋の入り口に置かれ、中の様子は見えないようになっていたが。.