「ところで、紹鴎様。そちらの設楽焼は如何でしょうか

energyelaine

2018年08月13日 13:17

「ところで、紹鴎様。そちらの設楽焼は如何でしょうか?」則正が尋ねると、再び茶器に目を戻し、「誠にええもんを持ってきて下された。設楽焼はわても一つ持っとりますが、こちらの方が少々格が上ですな。すな。」「ありがとうございます。」との則正の言葉に、紹鴎は貰うのが当然の如く、茶器を自らの横に置いてしまった。その様子に則正は慌てた。「あ。100貫…。」「ところで、店舗はどちらにありますのや?」紹鴎は、則正の言葉に被せるように、笑顔で質問をした。(とりあえず質問に答えねば。)と思った則正は、「都でございます。」と、答えた。「ほぅ。都は治安が悪うところもございます。くれぐれもお気をつけになり、商いに精を出してくらはれ。では、今日はこれにて。」そういうと、紹鴎は立ち上がり茶器を持って部屋を出て行った。則正は、紹鴎が去って行くのを見た後、はっとした。お金を貰っていないのである。(やってもうた。ワシとしたことが。このままでは戻れぬ。)則正は、自分の失態を後悔していた。売りに来たのに、何故か差し上げた形になってしまっている。だが、どこで自分が失敗したのかが全くわからない。