2019年10月29日
" 盛り上がる甲賀ベンチとは対照的に、滋賀学院のベンチでは異変が起きていた。 控えの選手たちに監督"
" 盛り上がる甲賀ベンチとは対照的に、滋賀学院のベンチでは異変が起きていた。
控えの選手たちに監督までもが大粒の汗をかき出したのだ。滋賀学院のベンチにいる全員が灼熱に覆われた。ベンチの奥から発せられた熱だた熱だった。
奥から一人の男がベンチの最前線までゆっくりと歩を進めた。すぐ横を通り過ぎられた者は、火傷するような熱さに、自分の感覚を疑った。いくらなんでも、一人の人間からこんな熱が発せられるわけがない。
現実には信じがたい。それでも、この男は実際に、周りが火傷するほどの熱を身体に帯びていた。
「……監督、出ます」
その男、背番号18。霧隠才雲。
「待て、才雲。川原はまだ1点しか取られてない。お前はまだだ」
「……いえ、お言葉ですが、ここで出なければ全ては水の泡と消えます。相手のピッチャーを考えると、2点を取られれば終わってしまうかもしれません」
すっと透き通った刃物のような目をしている。その目で監督を見ながら、霧隠は諭した。
「分かる。分かるが、才雲。まだ四回だ。まだ、早い」
監督は首を二度、横に振った。それを霧隠は首を振り返して否定した。
「監督、口応えのようで申し訳ありません。ただ、こう言えば分かってもらえませんか? あっちには私と同じ能力の者が数名いる。いや、おそらくほとんどがそうです。ここであっちの火を消さねば、手遅れになる。私はそう思います。私は遠江を倒すために呼ばれた。その前に遠江と戦えなくなってしまいます」
このすらりとした霧隠の全身の姿をまじまじと見ると、監督は困惑する。まだ出したくないのが本音だ。だが、確かに甲賀のピッチャーがあんなに凄いピッチャーだとは想定外だった。2点目は、霧隠の言う通り致命的になりかねない。
「…………分かった。ならば、才雲。ひとつだけ監督命令だ」
「はい、何でしょう?」
「思いきり暴れてこい」
霧隠はにこりと笑い、帽子をとった。
「はいっ」"
控えの選手たちに監督までもが大粒の汗をかき出したのだ。滋賀学院のベンチにいる全員が灼熱に覆われた。ベンチの奥から発せられた熱だた熱だった。
奥から一人の男がベンチの最前線までゆっくりと歩を進めた。すぐ横を通り過ぎられた者は、火傷するような熱さに、自分の感覚を疑った。いくらなんでも、一人の人間からこんな熱が発せられるわけがない。
現実には信じがたい。それでも、この男は実際に、周りが火傷するほどの熱を身体に帯びていた。
「……監督、出ます」
その男、背番号18。霧隠才雲。
「待て、才雲。川原はまだ1点しか取られてない。お前はまだだ」
「……いえ、お言葉ですが、ここで出なければ全ては水の泡と消えます。相手のピッチャーを考えると、2点を取られれば終わってしまうかもしれません」
すっと透き通った刃物のような目をしている。その目で監督を見ながら、霧隠は諭した。
「分かる。分かるが、才雲。まだ四回だ。まだ、早い」
監督は首を二度、横に振った。それを霧隠は首を振り返して否定した。
「監督、口応えのようで申し訳ありません。ただ、こう言えば分かってもらえませんか? あっちには私と同じ能力の者が数名いる。いや、おそらくほとんどがそうです。ここであっちの火を消さねば、手遅れになる。私はそう思います。私は遠江を倒すために呼ばれた。その前に遠江と戦えなくなってしまいます」
このすらりとした霧隠の全身の姿をまじまじと見ると、監督は困惑する。まだ出したくないのが本音だ。だが、確かに甲賀のピッチャーがあんなに凄いピッチャーだとは想定外だった。2点目は、霧隠の言う通り致命的になりかねない。
「…………分かった。ならば、才雲。ひとつだけ監督命令だ」
「はい、何でしょう?」
「思いきり暴れてこい」
霧隠はにこりと笑い、帽子をとった。
「はいっ」"
Posted by energyelaine at 18:29│Comments(0)